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2005年11月 8日 (火)

間違いだらけの中華料理:北京ダック

■中華料理店の低価格北京ダックの裏事情

IMG_0419

北京ダック専門店『全聚徳』の日本出店第二号店になる銀座店オープンの話題がでたので、本場の北京ダックと和風中華の北京ダックがどう違うか紹介しましょう。

 近年、日本でも北京ダックが気軽に食べられるようになりました。本場の北京でも元々アワビやフカヒレに比べれば北京ダックは有名な割に比較的安価な料理ですので、ようやく日本も世界基準に近づいてきたのかとも考えられます。

都内だと、六本木の北京ダック専門店『中国茶房8(エイト)』では丸1匹を3680円で食べられたり、横浜中華街では更に安い値段で食べられる店があるというウワサを聞いたこともある。

『中国茶房8』HP
●http://www.cceight.com/

気軽に食べられるようになったのは良いことだが、問題はその調理方法。
本場のレストランや日本のダック専門店では専用の窯に入れてじっくりと蒸し焼きをするのだが、日本のいかがわしい中華料理店の多くでは、見た目だけはこんがりと焼けたダックを作っているが、調理方法の実態は本場と大違い。

その違いは食べ方にも影響しており、正統派中国料理と和風中華では正に似て非なる料理なのである。詳しく説明すると・・・

■専門の焼き師が作る本場の料理店

 例えば、『全聚徳』ではダックを下ごしらえしてから焼き上げるまでに54の調理工程を行うという。これは新宿店でも実践されており、通常羽や内臓を取り除いて生のダックを1匹焼き上げるには45分かかると書かるという。

 私は取材の過程で、生の状態から下ごしらえして焼き上がるまでの工程を調理場で見せてもらった。企業秘密の部分もあるため全てをお話し出来ないが、なるほどこれなら肉が美味しくなる訳だと十分に納得出来る下ごしらえをしていた。

IMG_0411

 ちなみに北京ダック専門店では『全聚徳』に限らずダック専門の〈[火考]鴨師〉(ダック焼き師)という調理師がいる。
 生のダックの善し悪しを判断すると ころから、下処理・仕込み・乾燥・焼き調整を行い、最後にはお客に提供する際の切り分けまでを任せられている。それだけ北京ダックを調理するというのは難 しいという証明である。

写真は北京のダック専門店で撮影したものだが、日本では『全聚徳』を最高峰にして、上述の『中国茶房8』くらいまでは北京ダック専門の焼き師がいて、本場と同じようにダックを仕込んで窯で焼いている。

   
   

■和風中華の北京ダックは油をかけただけ!

一方、日本の中華料理店で供される北京ダックは、実にイージー。羽や内臓を取り除いた[肉のハナマサ」あたりで売っているアヒルを一匹用意して、中華鍋で熱した油を繰り返しダックにかけるだけでお客に提供しているのだ。作業工程を合計しても5つも無いだろう。こんがりとした色目を付けるために表面にザラメを塗ったりはしているが、基本的な調理方法と呼べるのは油をかけるだけ。

よってダックの中身は生肉のまま。そうなると、こういうあんちょこな店でテーブルに並べられる北京ダックは、表面の皮しか出てこない。肉は生なので、客に出せないのだ。

RIMG0011

運良く最近この皮だけしか出さない北京ダックを出す中華レストランに行ったので写真を付けておこう。
   
   

   

■ニセモノダックが文化摩擦の温床に!

 調理方法が地域によって変わるのは致し方ない。寒い地域、標高の高い場所、乾燥した国では当然調理方法は違ってくるだろう。しかし、だからといっていかにもそれが本場通りの調理方法を施したようにお客を誤魔化すのは、最悪だ!

 いつのころから和風中華の北京ダックに慣れ親しんだ日本人は、本場に行って北京ダックに肉付きの皮が出てくると「皮だけ食べるのじゃないの?」と、文句に近い言葉を店員に言い放つようになってしまっているのだ。

初めて来日した外国人を鮨屋に連れて行って板前さんのいるカウンターに座らせたところ、「このテーブルはどこから皿が回ってくるの?」と日本人が聞かれたのと同じ風味のカルチャーショックを、本場の北京ダック店の給仕は感じているはずだ。

間違っている側が難癖を付けているのだが、間違った概念を植え込んだ責任は重い。

だからハッキリ言う。メニューの料理名だけは豪華な和風中華レストランで北京ダックは食べるべからず・・・・

以上

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コメント

先ずはおめでとうございます。

本格的中国料理店が次々閉店・移転を余儀なくされている中、新たな開店とは嬉しい限りです。

実は、あちこち支店展開している当「全聚徳」よりも「便宜坊」に興味があります。「悶炉」と云うのは叉焼を焼く「明炉」のようなもんでしょうか?

「全聚徳」の「挂炉」も昔は棗の木を使っていたのに最近は環境問題から電気だかガスだかに切り替えたと聞きました。日本(新宿・銀座)ではどんな炉で焼いているのでしょうか?

「回転寿司」のたとえ:正にその通りだと思います。

個人的には皮だけの方が美味しいと思うのであれなんですが(^_^;)ただ、中国で、「皮だけ」がおいてある店いったとき、いつも一緒にいく中国人が後から来るってことで、マネージャーに「ほら、あの北京ダックお願い」とオーダーしたら、意外とキッパリした口調で「あれは北京拷鴨ではなく、なんたら(中国語でパリパリみたいな意味だったような)拷鴨皮です」といわれた事がありました。この記事を読んで、もしかすると北京ダックと北京以外の地域でつくられるパリパリ拷鴨皮という二種類の系統があり、それを日本人が一緒くたにして北京ダックといっちゃってるのかなあと思ったりします。填鴨みたいな方法で育てられた鴨なら肉つきで食べてもおいしいのかもしれないけど、そうでない場合は肉付でなく、皮だけの方が美味しいとか、広い中国で得られる素材の質で食べ方が変わってくるのもありかなあと。

卍さん

いつも鋭いご指摘ありがとうございます。
冒頭の切りとったダックの写真とダック焼き師の切り分け作業の写真は北京の『便宜坊』本店で撮影した物です。「悶炉」だからという訳ではないでしょうが、『便宜坊』の方が『全聚徳』よりサッパリしていたような印象でした。

『全聚徳』では薪で焼いているのは前門店と和平門店くらいではないでしょうか。それも特別な顧客にだけしか出していない、プレミアムになっています。普通は電気窯で焼いたダックです。薪で焼かなくなったのは環境汚染の問題と果物の薪が少なくなったのが原因だと『全聚徳』側は言っておりました。ちなみに新宿店は
電気窯です。


円海さん
中国通の御体験はまったくごもっともです。
本場の北京ダックでも皮だけ食べることがあります。アヒルの胸部分、もっとも美味しいとされる皮は、小さく切り取って砂糖で食べたりします。
また、ご指摘のように北京ダックとは別に地域によって北京ダックに似た料理が中国にはあります。四川ダック、雲南ダック、広東のガチョウのロースト(香港のヨンキーが有名ですが)など、味付けや食べ方も色々です。
ただし、中国の地域料理出てくる丸ごとのダック料理はどれもちゃんと窯で蒸し焼きにしており、和風中華だけが煮えたぎった油をかけているという大きな差が存在しているのです。

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